文鉄・お札とコインの資料館

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企画展アーカイブ おかねのかたち


※おことわり:このページに記載の内容は2020/03/18現在のものです。以降の誤記等の修正により必ずしも常設展ページの記載と一致しないことがあります。また、ここに掲載の貨幣は一例であり、前述時点で収集した貨幣を表示しています。



「企画展アーカイブ おかねのかたち」は文鉄・お札とコインの資料館開設15周年を記念し、初の企画展として実施したものです。この企画展の対象年齢は小学校3年生以上としています。これは過去に実施した企画展のアーカイブとなります。



プロローグ - おかねのかたち


突然ですが、コインを頭の中で思い浮かべてください。どんな形をしていましたか?おそらく多くの方が丸いコインを想像されたのではないでしょうか。2020年03月現在日本で流通・発行されているコインは記念コイン含めて全て丸い形をしています。

さて、なぜ日本のコインは全て丸くなったのでしょうか。これは明治時代に新貨幣制度を制定する際、当時の大蔵参与であった大隈重信が以下のような理由を掲げたとされています。

  • コインを数えるたり揃えたりする場合に丸い方が便利
  • 四角形などと比べてとがっている角がないため削れたりしづらく長く使える
  • 大量造幣の際に丸い方が作りやすい
こういったことから現在では丸いコインのみが造幣されています。さて、明治時代より前はどうだったのでしょう。

丸くなかった日本の昔のコイン


明治時代より前の江戸時代(実際には徳川家康が幕府を樹立する数年前より)には大判小判で知られるような丸くない貨幣が流通していました。それにはこれらの種類があります。

    • いわゆる大判小判と呼ばれるものと、小判の1/4の貨幣価値である一分判などがあります。
      当時発行された大判(万延大判) :
      当時発行された小判(慶長小判) :
    • 銀は主に重さによって貨幣価値が定められていました。そのため様々な形状がありました。江戸時代後半には質量と貨幣価値が一定となった一分銀が発行されました。
      江戸時代前半に発行された重さによって貨幣価値が定められていた丁銀(慶長丁銀) :
      江戸時代後半に発行された質量と貨幣価値が一定になった一分銀(天保一分銀) :
    • 大口取引ではなく、一般的な庶民が広く使用していた貨幣で、「昔のお金」と聞くとイメージするのはこの形という方が多いのではないでしょうか。江戸幕府によってこれまで明(現在の中国)が発行した「永楽通宝」などを整理し、「寛永通宝」が発行され明治時代以降も1厘貨幣として通用し、法律上は1953年に銭及び厘単位の貨幣が失効となるまで長きにわたり日本の貨幣となっていました。
      当時発行された銭(寛永通宝) :

丸くない外国のコイン


日本の今のコインが丸くなった理由が見えてきました。しかし、外国では今でも丸くないコインが発行されています。中には「えーっ!」と驚くような形のコインがあるかもしれません。それぞれ代表的なものを見ていきましょう


コインが丸くない理由


これらのコインが丸くない理由としては以下の事柄が考えられます

  • 偽造防止

      丸くないことで中心線が明確になり偽造貨幣を作りづらくなります。画像の例のように中心線が異なっただけでコインの印象は大きく変わり、偽造であることを区別しやすくなります。
        左 : 正しい角度
        右 : 誤った角度の例
  • 視覚に障害がある人の区別容易性

      視覚に障害がある人がコインの額面を識別する際に形を大きく変えることによって、手触りが変わり区別しやすくなります。日本のコインでは形が全て丸いですが、周囲に刻み(ギザ)をつけたり穴を開けたりして区別できるようにしています。例えば5円貨幣はかつて穴のないものが発行されていましたが、当時発行されていた1円貨幣と材質が同じな上、双方に刻み(ギザ)がありデザインや重さ、大きさも大きく変わらないため、のちに現在でも見るような穴あきに変更されました。また、ユーロコインなどでは周囲に大きくくぼみを入れることによってより区別しやすくしています。
      大きくくぼみが入れられた20ユーロセント ノルディック・ゴールド貨(裏面) :

エピローグ - おかねのかたち


丸くないコインは世界的に見るとかつてイギリスが統治していた国々(いわゆる大英帝国)に集中しており、現在でも20シリングおよび50シリング貨幣は7角形として発行されています。

現代では日本のコインは丸い形をしていることがいわゆる常識的なものとなっていました。しかしオーストラリアフィジーなどの国々の貨幣には丸くない貨幣があり、国の歴史の源流はかつてイギリスから独立した国及び地域であるなど、貨幣からその国の歴史を紐解くことができます。

企画展 「円」その歴史と日本社会のあゆみ





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