文鉄・お札とコインの資料館

本文へジャンプします
全額引き出した給与(イメージ図)

2000円札、君が好きだ。



早速であるが、私は2000円札が大好きである。いつも財布には2000円札を入れているし、買い物などでも普通に使っている。むしろ2000円札、いや2000円という単位が一番便利な貨幣単位だと思っている。給与を銀行でお金を引き出す時にわざわざ窓口へ行って全部2000円札でもらってくるほどだ。

しかし大変なことに気がついてしまった。2000円札を小売店で使うと10000円札と同じところに分けて入れているのである。次の人のお釣りが仮に2000円以上になった場合でも、1000円札で支払っているのである。5000円単位になれば嫌でも5000円札を渡してくるくせに、2000円単位でも2000円札は渡さないのである。これは由々しき事態だ。

ところで現在、日本で発行されている紙幣は4種類ある。 1000円や10000円札はATMでも出てくるし、5000円も小売店でお釣りとして出される場合がある。しかし残りの2000円、どこに行った?

以下に2000円札について多くの人が持っていると思う印象を書き述べた。

    ●使いづらい


    これは小さい子どもが「ピーマン嫌い」などと駄々をこねて食べない食わず嫌いと同じ気がしてならない。使わないから便利性がわからないのだと思う。数えづらいという声も聞いたことがあるが、その人は「にぃ、しぃ、ろぉ、やぁ、とぉ(2,4,6,8,10)」という数え方を知らないか2の段の掛け算ができないのかどちらかだ。

    ●5000円札と間違える


    並べてみてみるとよくわかる。全く似ていない。 これを区別できないとするのであれば1000円と10000円はもっと区別ができないはずである。

    ●自動販売機で使えない


    「自動販売機で使えないから」という意見にはとても共感できる。しかし、2000円をそういった理由で持たないのであればなぜ、同じく自販機では使えないはずの5000円札を持ち歩くのだろうか。そして、こういった自販機を見てほしい。

    これは食券の券売機なのだが、街にある多くの食券機をみると1000円、2000円札にのみ対応している券売機が多いことに気がつく。食券機を自販機として数えると、2000円札が利用できる自販機は5000円札のそれよりも多いはずである。

    ●額面が中途半端


    「安くもなく高くもなく、2000円札がちょうどいい。という場面がない。」という声も聞く。しかし財布の中のレシートを確認してほしい。金額が2000円に近い買い物はないだろうか。


    数日分の食料品をまとめて買うと不思議と2000円に近い額になる。ともすると一般的な買い物で2000円札を使えばとてもスムーズに買い物ができるのではないだろうか。

さて、いろいろと述べてきたが、ここで一つ興味深いことを聞いたので綴る。

    ●日本人の性質


    「たとえ優れているものであっても、日本人は慣れているもの、今まである概念を崩すのがきらい。」と聞いた。貨幣は20銭銀貨が、紙幣は乙20円券が(緊急用という性質であれば200円もあった)発行され、戦後に失効して以降、銭、円の単位とも1か5のみが使用され2の単位のものは一切発行されていなかった。長いこと日本人のお金に対する概念は1か5のみになり、1の次は5が固定化した。そのため突然2000円というものが発行されてもイマイチぱっとひらめくものがなく、なんとなく敬遠された。

この話には私もハッとするものがあったが、これは後で述べる。ではなぜ2000円札が好きになったかを述べようと思う。

    ●色が明るい


    2000円札が発行された当時の紙幣のラインナップはこの通りだった。 2004年に2000円札以外の紙幣が刷新され多少は明るい配色となったが、当時は偽造防止対策のため、地味な寒色、彩度の低い色ばかり使われていた中で、2000円札だけはオレンジと明るい配色であった。当時の低迷していた日本経済の中で持っているだけでも、すこしは財布の中が、また当時は諸事情で生きていること自体に絶望し、自殺ばかり考えていたが持っているだけで、見ているだけでも心が明るくなる、そんな気がしたのである。なので、2000円札がなければ私は本当に自殺していたかもしれない。

    ●お小遣い制ではなかった


    2000円札が発行された当時は私は中学生で、大人のようにお金に自由はなく、またお小遣い制ではなかったため、当時100円しなかったマクドナルドのハンバーガーも自由に食べることができなかった。これは高校生になっても続き、お年玉や進級祝い、誕生日などでお金を親や親戚からいただくことはあれど、とてもではないが5000円札なんて持ち歩けなかった。落とした時こわかったのである。しかし1000円札ばかり持ち歩いていたのでは財布がかさばってしまう。そこで目をつけたのが2000円札であった。2000円札に両替して持ち歩くようにしたのである。

    ●高校の修学旅行に持参


    高校の修学旅行は北海道であった。その時ばかりは小遣いとして3万円(10000円札で3枚)を親から頂いたが、すぐに銀行で全部2000円札に両替した。これには親も驚き「なんでそんな使えない紙幣にしちゃったの!変えてやるからよこしなさい!」と言って15枚の2000円札を両替しようとしたが拒否をして、その15枚の2000円札とともに修学旅行に出かけた。旅先で食事をしたり、お土産を購入するときに、大体1000円を超えていたため貨幣や紙幣を足したり、釣り札を多く受け取る必要もない、2000円札での買い物が非常に便利であり、その頃から私の中で「2000円札は何気に便利」という概念が生まれていた。

    ●ATMで出金された


    当時からコンビニATMで手数料がかからない金融機関をメインバンクとして利用していたが、その頃のコンビニATMは2000円札が出金された。これは賛否両論どころか否定的意見がかなり多かったらしく、現在では琉球など一部地方を除いて出金されなくなったが、ATMで5000円札はいつの時代も出ることがなく、1000円、2000円、10000円の3種類しか出てこなかった。このため、1の次は2、その次は10という概念になっていた。

    ●最先端の偽造防止技術


    2000年に発行された2000円札は同時期のD号券とは比較にならないほど最新、最先端の偽造防止技術が用いられていた。その技術は現在発行されているE号券にも用いられている(深凹版印刷、パールインキ、潜像模様など)ほどである。2004年年末から2005年年始にかけての大規模なD10000円券偽造事件が有名だが、簡単なカラーコピーでは到底再現できないほど、技術が詰め込まれた2000円札は魅力的であり、安心感もあった。余談ではあるが、2000円札があったことで私は紙幣・貨幣が好きになり、収集を始めた。

以上のことより、私が自分のお金を持ち始めた頃にちょうど2000円札があり、小遣い制でなかったという事情から高額券を持たず、必然的に事実上の最高額紙幣として2000円札を長く使っていたことから、2000円札に慣れ、むしろ5000円札に慣れることがなかった。そのため、オーストラリアアメリカなどの国民が100ドル50ドルよりも20ドル紙幣を広く親しみ使用しているのと同じように2000円札を好むようになった。ごく稀に10000円札で買い物をするときもあるが、お釣りを受け取る際に2000円札の有無を聞き、有れば当然混ぜてもらい、なければ全部1000円札でもらっている。

余談ではあるが、オーストラリアに旅行した際、私自身は2000円札と同じ感覚で20ドル札に大量に両替して持参したが、オーストラリアでは国民が普通に商店で20ドル札で買い物していたり、小売店側も釣り札として渡していたりしているシーンをみて、非常に居心地がよかったと同時に日本でも2000円札がこのようになればいいなと感じた。

買い物でも2000円という単位は非常に便利なので、2000円札がこれで二千の風(千の風)とならず、2024年頃にあると思われる次回の日本銀行券の様式変更でも2000円札が引き続きラインナップされ、小売店でも釣り札として準備され、お釣りとしても普通に流通されるようになる社会を願い、ぜひこのコラムで1人でも多くの方が2000円札を銀行で手に取っていただき、実際に使用していただくと幸いである。

2000円札、君が好きだ。






© 2001-2024 Wada Akina. All rights reserved.